愛知県の中でもたくさんの地域を管轄する「愛知県動物保護管理センター」。本所の他に3支所、尾張支所、知多支所、東三河支所を設け、動物の保護・管理・譲渡など様々な取り組みを行なっています。今回、LEONIMALは愛知県動物保護管理センターにお話を伺ってきました。様々な背景から捕獲・持ち込みされた動物たちと直に接し、動物と人とのあり方について常に現実と向き合っている、まさにいのちの現場です。全6回に渡り、センターに入ってくる動物たちの現実や、センターが不幸な境遇におかれる動物たちを減らすべく取り組んでいることをインタビュー形式でお届けしてまいります。第3回目は、動物たちの譲渡への取り組みと、それ以上にセンターの方々が大切に考えている「不幸な動物を減らす」取り組みについてお伝えします。
LEONIMAL(以下:LE):譲渡にあたって取り組まれていること、また譲渡数を増やす秘訣がありましたら教えて頂けますか。
愛知県動物保護管理センター(以下:センター):そうですね・・・成犬についてはまだ避妊去勢をしていない個体の場合は、一般の方に譲渡する前に手術をするようにしています。ただ、ほとんどのケースが3ヶ月未満の子犬なので、申し訳ないですが飼い主さんにやってもらうということを譲渡の条件にしています。避妊去勢について皆さんにご理解をしていただいた上で、貰っていただいている現実です。猫については、ほぼ100%避妊去勢をして譲渡しています。高齢の動物は避妊去勢ができなくなってしまうので、愛護団体さんにお願いをすることもあります。どうして譲渡が多くなったかといいますと、なかなか難しいですね。
LE:複合的な要因があるということでしょうか。
センター:そうですね。まずは、譲渡前講習会を開いた上で、飼い主さんの責任をきちっと認識してもらうよう努めています。犬については講習会を受けない限りは譲渡しないという方針でやっています。一番のポイントとしては譲渡数を増やすというよりも、苦境にある子たちを減らすほうが大切なので、飼い主さんには責任をきちんと認識していただくというのが大事なのかなと思っています。
LE:譲渡数が増えればOKというよりは、「飼う前にいかに飼い主としての自覚を持っていただけるか」ということにご尽力されているということですね。
センター:そうですね。譲渡しても飼い主としての責任が果たされなければ、結果、センターに入ってくる数は減らないじゃないですか。我々は入ってくる数を減らすほうが大切だと思っています。
LE:殺処分0を目指すということを、センターとして公に掲げていたりするのでしょうか。
センター:公に0を目指すと声を高らかに言っている訳ではないですが、そこを目指そうという想いで動いていることは確かです。しかし、こればかりは私どもだけで達成するのは非常に難しいです。県民の皆様の意識改革を促し、理解していただかない限りは、並大抵の努力では実現できません。人のそれぞれ考え方も違いますので、すべての方に同じ考えを共有していただくのは難しい部分があるのでね。目指してはいるんですけれど・・・
LE:そうですよね。愛護団体さんが自分の所在地で殺処分0にするというのは大きく掲げられているんですけど、行政として、明確にそれを宣言するのは難しい面がありますよね。しかし、おっしゃられていたように職員の方がそういう想いを持って取り組んでおられるのはすごく心強いと思います。
センター:昔は、保健所というのは犬を捕まえて殺すところだというイメージが、あったと思うんですね。そうではなくて、生かすために何とかしようと日々努力している部分はあるので、理解していただけるとありがたい部分はあります。
本当はね、誰が悪いかといえば責任感のない飼い主さんなんですよね。元々野犬って犬はいなかったと思います。そもそも飼い主さんの認識をやはり上げていかないと、根本的な対策は取れないのではないかと感じています。
第一回「なぜ、たくさんの動物が保護・収容されるの?」
第二回「不幸ないのちを生まないために」
第三回「譲渡数を増やすよりも、苦境におかれる動物を減らすほうが大切。」
第四回「なんとか少しでも生かしてあげたい。愛護団体に支えられて。」
第五回「保護動物を家族に迎え入れるにあたって。」
第六回「災害時に大切なペットを守るために。」
写真:服部たかやす
PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。