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【帝京科学大学 山本先生インタビュー①】~2つの川のはざまで~「絶対安全」神話は存在しない | LEONIMAL リオニマル
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予防獣医学、アニマルシェルター、獣医疫学を専門とし、動物治療の臨床現場からペット防災の啓蒙まで、多岐に渡りご活動されている帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科 准教授 山本和弘先生。
足立区と協働で、飼育から防災までを網羅したペット手帳を企画編集し、人とペットの安全を守る取り組みを推進されています。

この度、LEONIMALはペットの防災を楽しく学ぶ「カードゲーム いっしょに逃げてもいいのかな?」のプレイ体験会を山本先生の授業で開催するとともに、先生のご活動についてインタビューさせていただきました。
命の現場に立つ山本先生の情熱と行動力の源泉に迫ります。


2019年10月。マリアナ諸島の東海上で発生し、12日に日本に上陸した台風19号は、日本各地に甚大な被害をもたらしました。

全国各地の河川において氾濫や決壊が続々と報じられ、関東地方でも荒川をはじめ、膨大な人数の河川の流域住民の避難について、避難所の収容力や移動手段、避難タイミングなどの課題が浮き彫りになりました。

帝京科学大学が所在する地区も、荒川と隅田川という2大河川に挟まれた海抜0メートル地帯にあたります。
山本先生に大学周辺を案内いただきながら当日のお話を伺いました。


大学の横手には隅田川が迫る

LEONIMAL(以下 LEO):
大きな堤防にぐるりと取り囲まれているのですね。ここが氾濫したらと考えると背筋が凍る想いがします。

山本先生(以下 山本):
実際に当日はかなり水位が上がっていました。(橋梁の下を指して)泥の跡がついているでしょう。あの辺りまで来ていました。

LEO:
当日はずっと大学にいらしたのですか?

山本:
大学が避難所に指定されていましたから、午後3時には来ていたのですが、誰も避難していなくて驚きました。足立区の避難所は徐々に開設しはじめていましたが、それほど多くの方は避難所へは向かわれませんでした。

LEO:
その時間にはまだ、避難が必要だと行政も住民の皆さんも認識されていなかったのでしょうか。

山本:
おそらくそうでしょうね。とりあえず大学1階の飼育室にいる動物たちを上の階へ垂直避難させたところで、数人避難して来られ、その方達に対応しました。雨に濡れたり、額を怪我されている方もいたので、行政からの指示はまだなかったのですが、受け入れないという選択肢は自分の中には無かったですね。


大学には動物病院が併設されており、実際の臨床現場で学生さんたちが学ぶ

LEO:
荒川が氾濫すると、どれくらいの被害が想定されているのでしょうか。

山本:
流域の江東5区(江東区、葛飾区、墨田区、足立区、江戸川区)ではおよそ250万人の住民がいますが、避難所の収容人数はわずか20万人分です。

LEO:
膨大な人数ですね・・・。

山本:
実に膨大な数です。ところが台風19号の際は実際に避難した人は23区と多摩川沿いの市を合わせて17万6,500人と言われています。他の方々は自宅待機をしていたということですね。

LEO:
かなり数に乖離があったということですね。なぜだと思われますか。

山本:
これだけ災害が多い国でありながら、日本ではなぜか「自分だけは大丈夫」という心理が働いているような気がします。例えばハザードマップですが、危険な地域を知るという目安であるはずが、「自分の住んでいる場所は危険地域に当たらないから大丈夫」という安心材料になってしまうケースも多々あると思われます。ところが今回の台風では、ハザードマップで危険水域とされていない箇所で決壊や氾濫が多数起こりました。「自分だけは大丈夫」という「絶対安全」神話は存在しないと、個々人が意識すべきだと感じます。

LEO:
確かに、私たちも含めて日本人は「自分は大丈夫じゃないか」と考えがちかもしれません。何度も災害に見舞われているのに不思議ですね・・・。

山本:
海外では日常に様々な犯罪のリスクが潜んでいる国も多くあります。私が居たアメリカは銃社会ですし、国際NGOで支援活動に従事した北ウガンダでは激しい民族紛争がありました。ヨーロッパは歴史的に隣国との戦争が多い地域です。だからこそ隣国と共存する方法を編み出してきた側面もあります。
対して、日本は極めて平和な国です。日常生活におけるリスクは格段に少ない。これは非常に素晴らしいことなのですが、いざという時のリスクマネジメントの意識が平和に呼応して薄くなってしまっているかもしれません。

LEO:
自分にも起こりうる、という意識を日本人一人ひとりが持つことが大切ですね。

山本:
そして、自分なら命を守るためにどうするか。それを日ごろから考えておかなくてはいけませんね。


■山本先生インタビュー第2回はこちら
https://aisocial.jp/dr-yamamoto_02/

■山本先生インタビュー第3回はこちら
https://aisocial.jp/dr-yamamoto_03/


【Profile】
山本 和弘 やまもと・かずひろ 帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科 准教授

1991年3月 日本獣医生命科学大学卒業。日本獣医生命科学大学 獣医学科 公衆衛生学教室 助手を経て、カリフォルニア大学デイビス校 卒後研究員。1996年6月 Master of Preventive Veterinary Medicine (獣医予防医学修士) School of Veterinary Medicine, University of California, Davis 卒業。2002年6月 Ph.D. 獣医博士課程 School of Veterinary Medicine, University of California, Davis 卒業。
国際NGO, Japan International Food for the Hungry 奉職、大阪府内の動物病院にて勤務医を経て現職。専門分野は予防獣医学、アニマルシェルターメディシン、獣医疫学、人畜共通感染症、公衆衛生。