愛知県岡崎市の東公園内にある「岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)」。東公園内に動物園も隣接しており、広々として明るい雰囲気の施設です。動物園や公園があるため、自然と足を運んでしまうような施設になっているのが印象的です。こちらの施設では、東公園動物園の管理運営加え、動物の保護・治療また、管理・譲渡等様々な事業を行っています。今回LEONIMALは岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)にお話を伺ってまいりました。全10回に渡り、センターで保護・収容される動物たちや、ペットと飼い主さんが抱えている問題、長期的な目線で捉えた子どもたちへの早期教育など幅広い取り組みに対してインタビュー形式でお届けしてまいります。第二回は、猫の収容件数の多さが猫の飼い主さんの飼育レベルとも関係があるというお話です。
LE:岡崎市の犬猫の保護・収容件数に関してですが、いずれの項目も猫のほうが、圧倒的に数が多いですね。繁殖というのが重要なポイントになってくるのでしょうか。
所長:そうですね。この施設にペットが飼えなくなったと持ち込む飼い主さんの理由の中には、知らない間に生まれちゃって、最初は頑張ろうと思ったけど、ここまでお金がかかると思わなかったとか、やっぱりこれ以上飼い続けることができないといった多頭飼いによる経済的負担といった理由も多いです。
LE:やはり、特に猫の殺処分の問題には、“繁殖”がキーワードであると感じました。しかし、猫の飼い方に関しては飼い主さんによって様々ですよね。猫を外で飼ったり自由に中と外を行き来させていたりする飼い主さんもいますよね。
所長:猫の場合は犬と違って、飼育に関する法律がないですよね。ですから、外飼いに関してダメとは言えない。しかし、我々は猫の場合は室内飼いを啓発しています。
LE:もともと外に慣れている場合、外に出してあげたくなってしまいませんか。
所長:最初はそうかもしれません。しかし、慣れてくると室内でも大人しく過ごせると思います。外を行き来させると、交通事故や感染症などの危険もあります。避妊をしていなかった場合、飼い主の知らないところで妊娠・出産がおきている可能性もあるのです。そうなったときに、最悪、生まれてきた子猫たちが殺処分の運命をたどることもあるのです。
LE:猫の場合は、望まれない妊娠による保護・収容というのが原因であるというような印象を受けました。そうなってくると、やはり猫を飼っている方はその飼育方法に関して知識が必要ですよね。
所長:そうですね。もちろん、飼い猫だけではなくのら猫どうしの妊娠もあるので、すべてではないですが、猫を飼っている方に関しては最低限の飼い方に関して知っていただきたいと思っています。
LE:なるほど。猫を飼っている方に対する飼育レベルの底上げということが殺処分を減らすための一つのポイントになるということですね。
所長:そうです。そのために岡崎市の動物総合センターでは平成26年より「猫のマイクロチップ装着促進事業」を行っています。市内に26あるすべての動物病院に協力いただき、岡崎市内に在住の方を対象に、ペットの不妊治療をおこなうことを条件にマイクロチップを無料で埋め込む手術を提供するという事業を行っています。
LE:それは画期的ですね。特に猫の場合は首輪が苦手というか、嫌がる猫もいますし、中には首輪が取れてしまうこともありますよね。そうなってくると猫の場合はマイクロチップが有効ですよね。しかし、マイクロチップや避妊手術はなんだか、かわいそうと思ってしまうところもあり、なかなかできない気持ちもわかります…。
所長:そうですね。しかし、首輪に慣れていただくということも不可能ではないのですよ。センターの入口にも掲載していますが、なるべく若いうちに慣らすということができればよいですよね。でもあきらめないでいただきたい。軽い素材のものからはじめて首に何かあたる感触に慣れさせて、嫌がらなくなったらおやつ等で気を引きながら首輪を装着してみます。練習中は首の太さピッタリにして隙間をあけないでつけるようにアドバイスしています。気にして噛んだときに、下あごを首輪に締めてしまい危険なことがあるからです。
最初は飼い主さんが見ているときだけ等短時間ではじめて、毎日少しずつつけておく時間を延ばして慣れさせていくのがよいと思います。
LE:そうなんですね。そういうことを教えてもらえると、やってみようとか、努力しようと思えます。このセンターはそういった場所でもある。
所長:そうですね。あとは、避妊手術にかんしてもお話ししたい。避妊手術をすることは実はメリットもあるんですよ。発情期がないので大人しくおっとりした性格になりますし、例えば災害がおきたとき避難所でも大人しくしていられるとか。あとは生殖に関わる病気のリスクもなくなり長生きできるので人にとっても動物にとってもいい。
LE:えぇ。知らなかったです。
所長:そうそう。だから、かわいそうだから、嫌がっているから、うちの子に限っては大丈夫!と諦めてしまうのではなく、もっと猫や犬のことを知って、飼い主として猫を守ることや、飼い主表示をするといった責任を果たす、そういった飼い主さんの努力も社会全体として不幸な動物を減らすことにつながるので重要なことなのですよ。
あとは、ねこの場合ですと、首輪が絶対ではないので、ふらっと来た猫がのらなのか、飼い猫なのか分からないから、TNRや地域猫の知識があっても、なかなか避妊手術にまで決心することができないですよね。それでそのまま餌を与え続けてしまうということもあると思うんです。本当に悪気はないというか。むしろ猫のことを思っての行動だとは思うんです。
第一回「県内で最も厳しい譲渡制限、55歳未満に込めた思い。」
第二回「猫の飼育レベルの底上げ。」
第三回「飼い猫か、のら猫か、境界線があいまいな猫たち。」
第四回「飼い主がいない捨て猫のら猫への対処法は。」
第五回「高齢の方からの引取り」
第六回「大事なのは、どうしてここへ持ち込んだのかをきちんとヒアリングすること」
第七回「早急な“ゼロ”ではなく、本来の “ゼロ”を目指す」
第八回「アレルギーのある子もどう関わってもらえるのか。岡崎市内の年長児さんに来てもらうなかよし教室」
第九回「路上で死んでいる動物と殺処分される動物って同じ死かな、死に違いがあるかな、どっちがかわいそう?」
第十回「迷子の子だけではなく、事故に遭って亡くなってしまった子の飼い主も探す。返還率70%の裏側に職員の努力。」
写真:服部たかやす
PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。