リオニマルは「動物に誠実な飼い主になろう」をスローガンに商品開発や情報発信を行っています。
近年子どもの数よりも多くなっているペット。私たちの身近な存在です。しかし、4人に1人がペットを飼う一方で、年間16万頭という数の動物が殺処分されており、社会問題となっています。この問題の根本的な原因は何なのでしょうか。そもそも、人間が動物を飼うということはどういうことなのでしょうか。
リオニマルでは、野生動物や家畜動物、ペットを含めて動物と人との関わりを総括的に考えていきたいと思います。
どのように動物と向き合っていくべきなのか、「動物に誠実」に、とはどういうことなのか、様々な角度から見ると答えはひとつではなさそうです。そのヒントを探るため、動物をはじめとする様々いきものに関わる方にインタビューを行っていきます。多角的な方向から動物やいきものとの向き合い方を一緒に考えてみませんか。
白金丈英さんは、愛知県の知多半島を中心にミツバチに関わる活動を行っています。ミツバチの巣づくりや蜜ろうのワークショップ、ミツバチの飼い方や巣箱の設置の方法などをレクチャーされています。最初にお話を伺った時はミツバチって飼えるの!?と驚きましたが、インタビューを進めていくうちに、ミツバチを飼うというよりミツバチの大家さんって言葉がとてもピッタリと感じました。
人間がすることと言えば、ミツバチが住んでくれるような環境づくり、巣箱の設置、時々みまわり。白金さんのおっしゃる「ミツバチの大家さんになる」という言葉そのもので、ユーモアがあります。その家賃(お礼)として、ミツバチからはちみつと蜜ろうというプレゼントを受け取るということ。とても素敵なライフスタイルで、うっとりしてしまいます。ミツバチのことを考えて生きることは、めぐりめぐって地球にも自分にもやさしい生き方をするという言葉が印象的で、思わずミツバチの大家さんになりたいと思ってしまいました。ミツバチと暮らすということは多くの学びがありそうです。
今回はそんな白金さんに“いきもの”について教えてもらうべくいろいろお話を聞いてきました。
調べてみて分かったこと。ミツバチを飼うというのはそんなに難しいことじゃない。
LEONIMAL:白金さんはどうしてミツバチの活動をはじめたのですか?
白金:もともとは固定種を守るため、たねに関わる活動をしていました。たねの交換会、「たねBOX」の設置、作物の遺伝子組み換えに関する映画の上映会でトークショーを行いながら、できるだけ自然に近い方法で食物の栽培も行っていました。実は、私たちが普段口にしている野菜のほとんどが、F1種(一代交配種)というたねであり、地域で何世代にもわたって自家採種されてきた「固定種(在来種)」はほとんど流通されていないというのが現状です。
LE:「たねBOX」というのはどういうものなのでしょうか。
白金:「たねBOX」というのを地域の交流の場に設置します。そして、自家採種して余ったたね、固定種のたね屋さんで購入して余ったたねをBOXへ 置き、たねがほしい人はそこからたねを分けてもらいます。まだ交換するたねがない人も、将来「たねとり」できたらかえしてもらうことを条件に、たねの貸し出しができます。命をつなぐたね(自家採種・固定種・在来種)を守り、次世代へ地域の文化と共に伝えていきたいという思いで行っています。
LE:なるほど。そうだったのですね。
白金:本格的にミツバチを飼うきっかけは、友人から日本ミツバチを飼いたいから白金さんの畑に置かせてほしいとお願いされたことです。これまで日本ミツバチを飼うのは難しそうだから手を出さなかったけど、調べてみたらそんなに難しくないと分かってきました。その年に、たまたま愛知県の知多半島で地元の仲間とアースデイ(アースデイとは地球について考える日のこと)を企画していたのもあり、そこからミツバチの捕獲をはじめて、増やしていったのが始まりです。
ミツバチの導き。みんなの要望に応えつづけて今がある。
LE:ミツバチの活動が広がった理由というのはどういったことがあるのでしょうか?
白金:最初は自分で飼うだけだったけど、3年目ぐらいから知人に頼まれて、ミツバチの巣箱づくりワークショップをやるようになりました。そこから少しずつ要望が増えてきたというのが現状です。ミツバチ専門でやるつもりもなかったのですが、気づいたらこうなっていました。たねのことからミツバチのこと、オフグリットに関するワークショップや、自然農で田植えのワークショップもやっていたのですが、結局ミツバチの要望が増えていって、今では活動の8~9割がミツバチ関連になっています。自然にそうなっていった感じですね。
LE:ミツバチに導かれたのかもしれないですね!
白金:それまでの活動に関しては、自分で何か決めてという行動をしていたのですが、ミツバチに関しては要望がきて、それに応えつづけてきたという感じです。自分自身も楽しいからやっているし、それが人にも喜ばれるから続けられるのではないかなと思っています。
LE:素敵です。
ミツバチとクリエイターは実はとても深い縁がある!?
LE:ミツバチに関心が高い人が増えているみたいですが、実際どうなのでしょうか。
白金:ミツバチに関してはこれまでにいろいろなところでワークショップを行ってきましたが、受け付け開始30分で定員が全部埋まってしまうこともあります。ミツバチに関心を持っている人の多さを感じています。
LE:ミツバチに関心が高い人ってどんな人が多いのですか。やっぱり環境問題に関心が高い人が多いのですか?
白金:そういう人もいると思うのですが、ミツバチの巣作りのワークショップに来てくれるのはクリエイターさんや芸術家の人が目立ちます。陶芸家の人も多いですね。あとはやっぱり巣作りをするのでDIYが好きな人です。ハーブや植物に関心がある人やアロマテラピー、蜜ろうをすごく使うのでコスメ関係の人も。あとは料理人やガーデナー、農業関係者の方も多いです。
LE:何かを創る人が多いという印象ですね。
白金:やはり、土という部分がおおきいのかな?カルチャーの語源はカルチといって耕すという意味です。日本語の芸という字を旧字にすると藝という字になるのですが、たねをまく、草木を植えるという意味があるのです。よく使う芸の方は草を刈るという意味で、すごく対局な意味なのですけどね。藝の方は人として成長するための業という意味もあるので、僕は藝という字をあえて好んで使っています。
LE:何かを創る人というのはミツバチととても深い縁がありそうですね。
白金:自分と向き合う際に、ミツバチからインスピレーションを受けることもあるのかなと思います。
ミツバチが元気というのは、あらゆる生き物にとっても良い環境。
LE:ミツバチの活動をされる中で課題はありますか。
白金:ミツバチ自体が減っているということです。まだ絶滅危惧種にはなっていないけど、なる可能性もあると言う人もいます。日本ミツバチだけではなくて西洋ミツバチやクマバチ、ミツバチの仲間のハナバチなども同様に減少しています。現在日本には約500種類ぐらいのハチがいます。日本ではあまり言われていないけど、海外ではハナバチも保護しようという動きもでてきてはいますよ。
LE:そうなのですね。ミツバチの減少に関しては全然意識したことがなかったです。
(最近はこのようなオシャレなハナバチの巣箱づくりも行っています。)
白金:日本ミツバチはあらゆる毒に弱いです。毒の耐性としてはショウジョウバエの2分の1、西洋ミツバチの8~12倍毒に弱いとも言われています。ミツバチを飼うことを通じて、必然的にミツバチにとって住みやすい環境を考えることになります。そしてミツバチが元気ということは、あらゆる生き物にとっても良い環境ということなのです。ミツバチのことを考えて生きるのは、めぐりめぐって地球にも自分にもやさしい生き方をするということだと思います。 “Think globally, Act locally” という言葉がありますが、直訳すると「地球規模で考え、地域で行動せよ」という意味です。大きな枠組みで考えて、自分の身の回りで一歩一歩やっていくという感じだと思います。この考え方にとても共感しています。
LE:人間も環境の一部ですものね。
(日本ミツバチの巣箱の中の様子をとてもきれいな自然が生み出した造形です。)
半田市在住。 半農半主夫。環境活動家。愛知県知多半島にて日本みつばちの養蜂、お米、野菜、果樹、ハーブなど自然農で自給。愛知、岐阜、三重、浜松での日本蜜蜂のワークショップやお話会や固定種のたねの交換会など活動の場を広げています。