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愛知県名古屋市の平和公園に隣接する「名古屋市動物愛護センター」。目の前には十分な広さのドッグランがあり、お散歩の時間には、職員さんに見守られながら楽しそうに走る犬たちの姿が印象的です。名古屋市は2016年度に犬の殺処分ゼロを達成し、大きな反響を呼びました。私たちが取材に訪れた際は丁度、中学生が動物愛護教室のため施設を訪れていました。平日ですが人の出入りが多く、明るい雰囲気の施設です。今回LEONIMALは、名古屋市動物愛護センターにお話を伺ってまいりました。犬の殺処分ゼロに至るまでの経緯や幅広い取り組みに対して全7回に渡り、インタビュー形式でお届けしてまいります。第三回は名古屋市の犬の捕獲数や、引取り件数から見える課題に関してお伝えします。

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LEONIMAL(以下:LE):名古屋市の犬猫の収容頭数に関してお伺いさせていただきたいのですが、まず犬の場合はどのような状況なのでしょうか。

島崎さん:犬に関してですが、平成28年度の負傷による収容は8頭です。内5頭は返還され、残りの3頭は譲渡されています。また、遺棄の疑いがある動物について警察からの依頼は3頭です。

LE:遺棄の疑いというのは、段ボールなどに入れられて、明らかに人の手が加わっていると分かるというケースですよね。

島崎さん:そうですね。前提として、動物の遺棄というのはれっきとした犯罪であるということをしっかりと知っておいていただきたい。

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LE:飼い主からの引取りというのはどれぐらい発生しているのでしょうか。

島崎さん:飼い主からの引取りは35頭です。そのうち子犬というのは0でほとんどが成犬です。犬の場合は猫に比べると啓発が進んでいるので計画外の妊娠・出産というものがほとんどなくなりました。

LE:なるほど。引取りの理由としてはどういったことが多いのでしょうか。

島崎さん:今犬も猫も引取りになる理由の第一位が飼い主の病気・入院・死去です。亡くなった飼い主さんの横にわんちゃん、ねこちゃんがぽつんと取り残されている。さあどうしよう?となるわけです。こうした状況がとても多いというのが現状です。

LE:飼われている犬や猫にも高齢化の波が押し寄せているという状況なのですね。

島崎さん:そうですね。あと景気が悪くなると経済理由が増えます。一方で、犬に関しては、増えすぎちゃったからという理由での引取りはなくなりました。

LE:飼い主さんの啓発が進んでいるということですよね。また、犬の捕獲頭数に関して平成28年度の数字を見えると186頭とありますが、内126頭は返還されています。返還率としては約67%で非常に高いのではないかと感じるのですが、どのような工夫があるのでしょうか。

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島崎さん:返還率は徐々に上がってきてはいますが、特別高いわけではないと思いますよ。迷子犬の返還率は67%なので、あと33%の飼い主さんは?という話になりますよね。遠方から遺棄しに来ているのではと思えるような状況もあります。例えば、国道沿いの道にペットが遺棄されているケースもあり、遠くに住んでいる人がわざわざ持ち込んで遺棄している疑いが否めないです。

LE:なるほど。犬の捕獲数で得に遺棄というのは地域をまたいでいる可能性が高いですよね。愛知県内ではまだ野犬もいるということもお聞きしたのですが、名古屋市でも野犬はいるのでしょうか。

島崎さん:野犬はいないです。数年前に野犬が払底して、それ以来いないのです。

LE:ということは、市で捕獲される犬は飼い主がいたということですよね。

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島崎さん:そうですね。必ず飼い主がいたであろうと思います。野犬というとみなさんどのようなイメージを持ちますでしょうか。
飼い主さんが他県から譲り受けた元野犬の子が、今センターにもいます。飼主さんは、一度は野犬を飼ってみようと思ったものの飼い切れずに、飼育をあきらめてしまったのですが、みなさんが一般的にイメージするようなペットとは全然印象が違います。人との距離感が違うのですね。

LE:そうなのですね。名古屋市では野犬を見る機会は少ないので、飼い主さんがいたとなると捕獲される犬の内訳は、迷子犬か遺棄ということですよね。迷子犬に関してはどういった状況なのでしょうか。

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島崎さん:普通の飼い主さんだったら、ペットがいないと気づいた時点で大騒ぎです。殺処分されてしまうのではないかと心配して、泣きながらここに来る方もいます。でも、中には来所された方が飼主さん本人ではなく、御親族や近所の人などであったりして、返還がスムーズにいかない場合もあります。また、飼い主さんが高齢の方でどこを探したらいいのか分からない場合もあり、返還が遅れることもあります。昔は、高齢犬や譲渡ができない子は殺処分されてしまっていいました。しかし、今は飼い主さんが見つかるまで飼っています。
最近あったケースだと、センターにもうすぐ死にそうな高齢犬がいたのですが、そのことをSNSで発信して、奇跡的に飼い主さんに会えて大往生したということもありました。ですので、一概に飼い主さんが悪いわけではないということは言えると思います。

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第一回「小さな努力の積み重ね。名古屋市が犬の殺処分ゼロを達成した理由。」
第二回「一人の志高い人だけが頑張るのではなく、地域全体が少しずつ変わることが大事。」
第三回「名古屋市の野犬は数年前に払底。捕獲犬の返還率67%でもあとの33%はどこからきたの?」
第四回「引取り原因の1位が病気・入院・死去。高齢化社会の影響がペットにも。」
第五回「譲渡されにくい子ではなく、譲渡されやすい子をボランティア団体さんへ。 」
第六回「顔を見ちゃったからと言って選ばなくていい。あなたがもらっていかなくても処分しないから大丈夫。」
第七回「猫の交通事故死、殺処分数の約20倍。対策は室内飼いと避妊去勢。」


写真:服部たかやす
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PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。