愛知県名古屋市の平和公園に隣接する「名古屋市動物愛護センター」。目の前には十分な広さのドッグランがあり、お散歩の時間には、職員さんに見守られながら楽しそうに走る犬たちの姿が印象的です。名古屋市は2016年度に犬の殺処分ゼロを達成し、大きな反響を呼びました。私たちが取材に訪れた際は丁度、中学生が動物愛護教室のため施設を訪れていました。平日ですが人の出入りが多く、明るい雰囲気の施設です。今回LEONIMALは、名古屋市動物愛護センターにお話を伺ってまいりました。犬の殺処分ゼロに至るまでの経緯や幅広い取り組みに対して全7回に渡り、インタビュー形式でお届けしてまいります。第四回は犬猫の引取り原因に関してのお話と、そこから見えてくる課題をお伝えします。
LEONIMAL(以下:LE):犬は飼い主からの引取りは35頭とそこまで多くはない印象ですが、猫の方はどうなのでしょうか。
島崎さん:飼い主からの引取りというのは246件です。うち子猫は137頭です。
LE:子猫の引取りというのは、放し飼いや避妊をしないまま、計画外に妊娠してしまってというのはなんとなく予想できるのですが、成猫の引取りというのはどのような理由なのでしょうか。猫の場合は、攻撃的だとしても犬よりはまだ対応できそうな程度かと感じるのですが。
島崎さん:飼育者・所有者が病気・入院というのが1位です。計画外の繁殖というものもありますが、7,8匹増えてからようやくここへ来るというような状況です。ですので、計画外ではないと思うのですよね。分かってはいるけど避妊をしていない。それで、お手あげ状態になってからここに来てしまう。そういった状況だと思います。
LE:その時に子猫だけではなく、成猫もということなのですね。
島崎さん:そうですね。今、犬も猫も引取りになる理由の第一位が、飼い主の病気・入院・死去です。高齢化社会の影響が犬や猫の課題にもなってきているというのを、とても実感しています。
LE:犬の場合、飼い主からの引取り件数は35頭と、猫に比べると数はそこまで多くない印象です。犬の場合はある程度啓発も進んできているのですが、やはり高齢化というのは課題ということですよね。
島崎さん:そうです。犬の場合、引っ越しで飼えなくなったというケースとともに、大きくは経済的な理由が挙げられます。経済的な理由に関しても、飼育家庭の高齢者の病気や介護との関連性が高いです。
LE:高齢者の健康面でもペットと生活するというのはメリットがあるとは思いますが、病気・入院の際にどうするかは課題ですよね。
島崎さん:高齢の飼い主さんの万が一に備えて、考える必要があります。今は高齢の飼い主さんのペットの受け皿がないというのが現状です。
LE:それについては、日本の高齢化の加速に伴い、今後ますます社会で考えなくてはいけないですね。
第一回「小さな努力の積み重ね。名古屋市が犬の殺処分ゼロを達成した理由。」
第二回「一人の志高い人だけが頑張るのではなく、地域全体が少しずつ変わることが大事。」
第三回「名古屋市の野犬は数年前に払底。捕獲犬の返還率67%でもあとの33%はどこからきたの?」
第四回「引取り原因の1位が病気・入院・死去。高齢化社会の影響がペットにも。」
第五回「譲渡されにくい子ではなく、譲渡されやすい子をボランティア団体さんへ。 」
第六回「顔を見ちゃったからと言って選ばなくていい。あなたがもらっていかなくても処分しないから大丈夫。」
第七回「猫の交通事故死、殺処分数の約20倍。対策は室内飼いと避妊去勢。」
写真:服部たかやす
PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。