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愛知県名古屋市の平和公園に隣接する「名古屋市動物愛護センター」。目の前には十分な広さのドッグランがあり、お散歩の時間には、職員さんに見守られながら楽しそうに走る犬たちの姿が印象的です。名古屋市は2016年度に犬の殺処分ゼロを達成し、大きな反響を呼びました。私たちが取材に訪れた際は丁度、中学生が動物愛護教室のため施設を訪れていました。平日ですが人の出入りが多く、明るい雰囲気の施設です。今回LEONIMALは、名古屋市動物愛護センターにお話を伺ってまいりました。犬の殺処分ゼロに至るまでの経緯や幅広い取り組みに対して全7回に渡り、インタビュー形式でお届けしてまいります。第六回では、ボランティアさんとの連携の際に課題となる命の判断に関してお伝えします。

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LEONIMAL(以下:LE):病気がちであったり、高齢であったり、譲渡されにくい子をボランティアさんが自分で引き取ってしまって、結果的にボランティアさんの飼育頭数が増えてしまい、負担になっているということがよく問題になっていますよね。そういうケースはどのように対処すべきなのでしょうか。

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島崎さん:この子を自分が連れていかないと殺処分されてしまうという状況では、どのボランティアさんも無理をしてでも連れていこうと思われます。ですので、当センターでは、ボランティアさんにも一般の方にも、譲渡できなかったら処分する、という形では動物を紹介していません。少しくらい譲渡に時間がかかっても、一回紹介した動物は原則、処分をしません。

LE:命の選択は委ねないということですよね。とても心強いお言葉です。

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島崎さん:ですので、ボランティアさんが譲渡されやすい子を選んで持っていくというのは、全然問題ないですよと言っています。譲渡されやすい子のケージを一個あけてくれれば、あとから来た子が収容できるかもしれない。だからこの子をよろしく頼みますねという感じで。ただ、手に余るような子は引き受けないでくださいね。紹介する子はみんな生かしておきますからと伝えているのです。

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LE:役割分担が明確ですね。

島崎さん:そうですね。あくまで、命の選択をするのは私たち。収容頭数が増えてきて、さすがに処分せざるを得ない状況になった場合は、命の選択をするしかないケースもあります。今はそこまでのとこになっていないから、殺処分にならないのです。ただ、やはり例外はあります。

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LE:寿命が長くない子と分かっている場合は、悲しいけれど最後はボランティアさんのおうちで天国にいけるということですね。

島崎さん:そうですね。そのあたりも普段からコミュニケーションをとって、信頼関係があるうえで実現しています。このようなすごく例外的なご紹介以外は、この子あなたが持っていかなくても私たち面倒をみることができるから、この子については少なくとも心配しなくていいよと説明しています。それでも持って行けるという場合のみ譲渡しています。ただ、そのあと収容頭数が増えて、キャパオーバーになってしまう場合はどうしようもないかもしれません。ただ、顔を見ちゃったこの子に対する責任感というのは感じなくていいよとお伝えしています。

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LE:そういった命の選択を一般の人も感じている部分はあったりするのでしょうか。

島崎さん:一般譲渡の時もそうです。「私たちが選ばなかったらこの子は処分されてしまうのかもしれないと思うと恐くて見ることができない」とおっしゃる方もいます。殺処分はしませんから、好きに選んでくださいねと。皆さんの前にお出しした猫が処分されるのは感染するような病気が発生した場合や、外から持ち込んだ猫が感染したというようなことがない限り、この施設では面倒を見ていきますし、いままでにもどうしようもなく殺処分になったケースはないのです。

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LE:つまり、殺処分数399頭というのは他の要因ということですよね。

島崎さん:そうですね。乳飲み子や交通事故による負傷が多いです。ここに来たときには非常に厳しい状況なのです。

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第一回「小さな努力の積み重ね。名古屋市が犬の殺処分ゼロを達成した理由。」
第二回「一人の志高い人だけが頑張るのではなく、地域全体が少しずつ変わることが大事。」
第三回「名古屋市の野犬は数年前に払底。捕獲犬の返還率67%でもあとの33%はどこからきたの?」
第四回「引取り原因の1位が病気・入院・死去。高齢化社会の影響がペットにも。」
第五回「譲渡されにくい子ではなく、譲渡されやすい子をボランティア団体さんへ。 」
第六回「顔を見ちゃったからと言って選ばなくていい。あなたがもらっていかなくても処分しないから大丈夫。」
第七回「猫の交通事故死、殺処分数の約20倍。対策は室内飼いと避妊去勢。」


写真:服部たかやす
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PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。