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前回に引き続き、熊本県動物管理センター 所長・熊本県健康福祉部 健康危機管理課 乳肉衛生班 課長補佐のお二人へのインタビューをお届けします。(※2016年12月取材当時の役職は「主幹(班長)」でしたが、現在の役職は「課長補佐」となります。)

第3回では、動物の出産時期でもあった4月に発生した災害下ならではの苦労、また動物愛護の意識浸透についてお伝えしました。第4回は震災と関係なくセンターに運ばれてくる動物たちの実態、そして災害に向けて飼い主ができることについてお伝えします。


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LEONIMAL(以下:LE):そもそも地震とは関係なく、それ以前に殺処分対象として運ばれてきてしまう動物たちはどのような状況が多いのでしょうか?

熊本県健康福祉部 健康危機管理課 乳肉衛生班 課長補佐(以下:県職員):犬ではいわゆる放浪犬、飼い主を明示するような名札とかがなく、徘徊している犬が圧倒的に多いですね。いわゆる本当の野犬というのは少なくて、人に慣れている犬が多いです。首輪はあるけれど狂犬病予防接種の鑑札や迷子札がついていなかったり・・・。

熊本県動物愛護センター所長さん(以下、所長):一般的に「やけん」と言われるじゃないですか。あれは正式には「ノイヌ」と呼ぶんです。純粋に人に飼育されたことがなく、世代世代で野山で生まれて育つ、人と接点がない犬のことです。「やけん」と呼んでしまうと、飼われていたけれど逃げたり放浪している犬というイメージが強い。でもそういうもともと飼育されていた犬は徘徊犬・放浪犬なんです。

LE:なるほど。「やけん」と呼んでしまうと飼い主のいない犬イコール「やけん」というあやふやな捉え方になってしまいますね。あくまで徘徊犬なんですね。猫の状況はいかがですか?

県職員:猫は住民の方とかが飼い主不明で引取りを依頼されるケースが多いですね。納屋で野良猫が子猫を生んでしまって困っているとか。もともと飼われていない猫がほとんどです。地域猫が産んでしまった時も行政は積極的に取りにはいきません。

犬も猫も飼っている動物を引き取るというケースは、行政は基本的には終生飼育を原則としており、飼えなくなった場合は、ご自分で新たな飼い主を見つけていただくことを努力していただくようお願いしています。飼い犬の引取りで対応となっているのは人を咬んでしまったとか特殊な事情くらいです。

LE:徘徊犬は実際にどの程度、もとの飼い主さんに戻せるんですか?

県職員:迷子札もついていない、鑑札もない首輪だけの犬が多いですから。引き取って厳密には5日間は保護しているんですが、その間に「うちの犬がいなくなったんですが」とご連絡いただいたり、ホームページに写真を上げているのでそれを見て「うちの犬に似ているんですが」とご連絡がいただければお返ししています。

LE:そのまま飼い主さんが分からなければ殺処分の運命をたどってしまっていたんですね・・・。

県職員:飼い主明示さえあれば、熊本県動物愛護センターに来る必要がなかった犬がたくさんいるんです。震災でたくさん運ばれてきたときに特にそれを実感しました。やはり大事なペットを守るために「迷子札」はつけていてほしいですね。その場で保護した方が連絡してくれることも多いので。

LE:ここに来る前に解決しますよね。

県職員:その通りです。猫にもつけてほしい。連絡先が分かるものがあればその場で助かる命もたくさんあるんです。耐久性のあるもので作られていると良いかもしれませんね。迷子札や鑑札をつけない理由に、首輪に装着しにくい形状だったりすることもあるんです。装着が簡単にできると良いかと思います。

LE:猫は普段から自宅と地域を行ったり来たりするスタイルで飼われている場合も多いと思うんですが、その点についてはどうですか?

県職員:猫の感染症や事故防止の観点から見れば、室内に遊べる場所を作ってあげて、室内で飼うことが望ましいです。戸外で自由にさせてあげればよい、と考える飼い主さんもいらっしゃいますが、事故に遭ったり迷い猫にしないためにも室内飼育が本来あるべき飼い方だとおススメしたいです。

LE:猫のいのちを守るためにも室内飼育が望ましい、ということは是非伝えていきたいですね。


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LE:災害に備えて飼い主さんが普段から取り組んでおいた方が良いと思われることは、迷い札以外にもありますか?

県職員:震災時に感じるのは、同行避難先や仮設住居で一緒に住むのを考えた時に、ある程度クレートトレーニング(動物がケージ等の中で過ごすことに慣らしておく訓練)をしておくことで、飼い主さんが避難所等で過ごしやすい。同行避難で室内飼育が原則の自治体も多いですから、「室内飼い」「クレートトレーニング」「感染症防止」の3つは動物を飼育するにあたって必須条件としておくべきかなと思います。

LE:感染症予防っていうのは普通に動物病院で行なっているワクチン・ノミダニ駆除や寄生虫駆除とかですね。

県職員:終生飼育と適正飼育も是非意識が高まってほしいです。

LE:動物たちのいのちを守るために、飼い主さんたちがちゃんと普段から見守れる対策をしておくことが大切ですね。

所長:そういう意識が広まって、最終的にはこういう施設が必要でなくなることが一番だと感じます。

※この取材は2016年12月に行われました。


普段から飼い主一人一人が迷子対策・トレーニングや予防接種などをきちんとしておくことで守れるいのちが増えるのだと改めて実感するお話でした。第5回では、動物たちの社会化についてお届けします。


6回に渡るインタビュー、各回の記事はこちら
その時熊本で インタビュー第1回:被災犬・被災猫の保護が始まった

その時熊本で インタビュー第2回:人とのつながりが動物を救った

その時熊本で インタビュー第3回:地震は動物の出産時期に起こった

その時熊本で インタビュー第4回:迷い犬・迷い猫にしないためにできること

その時熊本で インタビュー第5回:取り組みを続けていく・知ってもらう

その時熊本で インタビュー第6回:地域と一緒に生きる飼い方を