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愛知県岡崎市の東公園内にある「岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)」。東公園内に動物園も隣接しており、広々として明るい雰囲気の施設です。動物園や公園があるため、自然と足を運んでしまうような施設になっているのが印象的です。こちらの施設では、東公園動物園の管理運営加え、動物の保護・治療また、管理・譲渡等様々な事業を行っています。今回LEONIMALは岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)にお話を伺ってまいりました。全10回に渡り、センターで保護・収容される動物たちや、ペットと飼い主さんが抱えている問題、長期的な目線で捉えた子どもたちへの早期教育など幅広い取り組みに対してインタビュー形式でお届けしてまいります。第八回は本当の“ゼロ”とは何かを本気で考え、子どもたちへの教育現場へも介入していく岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)の挑戦に関して熱いお話をお伺いしてきました。

 


 

 

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服部:早期教育に関して、20年掛けて子どもたちを教育したいというお話をされていましたが、本来のここの業務としては動物の管理・譲渡・動物愛護の精神を育むといったようなことが大まかにあるのかとは思うのですが、実際に子どもたちの教育へ介入していくというのは、これらから逸脱してしまうというか、負荷が掛かることではないのでしょうか。

所長:はい、凄く負担がかかってはいます。しかし、我々は子どもへの早期教育こそ本当に必要であると思っています。

服部:行政的な住み分けで言うと教育現場とこちらの岡崎市動物総合センターは全く別の管轄になるわけで、結構難しい話ではないかということが感じられます。学校現場から頼まれていないことを今所長さんが掲げていらっしゃるということにとても驚いているのですが、これをどういう形でやっていこうと思われているのでしょうか。ここに実際に足を運んでくれる人だけでは実現できない。それをどう広げていこうと考えていらっしゃるのでしょうか。

 

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所長:本来は教育委員会を巻き込むべきだと思います。ただ、ある程度実績が出ていないと実現するのが難しいのが現状です。本当は小学校中学年クラスから行いたいのですが、難しい。そこで、平成25年から岡崎市内のほとんどの市立の保育園・幼稚園・こども園の年長児さんを対象に、「なかよし教室」というものを行っています。本当の基礎的な、ワンちゃんってこういうものだよっていう紙芝居を見せながら、どっちが正しいかな?というような話をしています。実は今だと週に2回、8月は無いですけども、そのほとんどが火曜と金曜日ですが、岡崎市内のほとんどの年長さんに来て貰っています。

全員に来て貰っています。一回当たり30人ぐらいしか見ることができない。それ以上多くなっちゃうと見きれない。大体年間50回以上実施しています。28年が54回、39園。27年が37園です。岡崎市立なので、岡崎市のバスをちゃんと年間予約してありまして、朝10時に、バスに乗せて来て貰う。子供達にとっては遠足ですよ。それで、団体行動を一緒にしながら入ってきます。先生が2人付いて来てくださって子どもたちが30名前後で来るのですが、先生とちょっと話しながら今日こんな感じでやりますからねというのを打ち合わせして、朝のご挨拶をした後、動物に触る前には手を洗いましょう、動物触った後はまた手を洗いましょう、みんなの病気を動物さんに移してはいけないし、動物さんから病気を貰ってもいけないから、という話をする感じです。基本的には犬なのですが、ボランティアの方に犬を連れて来て貰っています。全回すべてそういう訳ではないです。その回数やっちゃったらボランティアさん達も全回全回来るわけにいかない。動物無しでやるときもありますけども、事前にセッティングができればボランティアさん達に連れて来て貰っています。

まず、動物にも気持ちがあるんだよっていうのを分かって貰いたくて、紙芝居で話をして。これはどんな気持ちになるだろうね。これは悲しいかな?嬉しいかな?なんていう話をしながら子供達に動物にも気持ちがあるんだよっていうのを伝える。その後ですね、実際に動物に触ってみようというので、もし道路でワンちゃん見かけた時に手を出しちゃいけないよ、じゃあワンちゃん触るのにどうやったらいいのかな?という事をやります。ちゃんと飼い主に許可を貰おうこと、それから始めはグーでね、なんていう事をきちっとやらせて犬がいれば本物の犬を触らせます。犬がいない時は犬の人形を置いてやらせますね。昔は皆で犬に触っていましたが、やっぱり犬に対してストレスが掛かるって事で、今は出来るだけ現物を触らせるっていうのは減らしています。その代わり、犬と人って上手にやればこんな事が出来るんだよっていうことを見せてあげます。ワンちゃんに一発芸をしてもらいます。子ども達あははって喜びますので。こういう風にやればちゃんとこういう事が出来るんだよっていうのを子どもたちにも分かりやすく見せたりなんかしています。

それから心臓の音を聞かせてます。生きてるよって。

 

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服部:それは聴診器で?

所長:聴診器で。全員が聞けるようにスピーカーの付いた聴診器ですね。あとは手を洗っておトイレ行って来て貰ってから、今度ここは動物園が隣にありますので、動物園もここの管轄なので、動物園の飼育係の話が始まります。象さんのお話から始まります。ウンチの話、食べるものでこうなるんだよとか、生物多様性って言うと大げさですけどそういう基本の事をやります。お昼になってお昼は食べて頂いてちょっと自由時間で遊んで頂いて、その後は動物園の中を案内しましょうというので触れ合いコーナーに行ってまたいちからです。今度はモルモットの触れ合いをさせたりなんかして。手を洗わせて餌やりをやらせてまた手を洗うという事を繰り返しながら最後ここへ戻ってきて、大体2時前後に今日一日ありがとうございましたというお礼を貰って、外まで送っていっておしまい、というのを25年からやっていますよ。週2回ね。

 

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服部:物凄い負担になるんじゃないですか。

所長:凄い負担です。何で人が増えないのとよく言われます。年間に対応する苦情の延べ頭数は3000頭です。この他に野生動物の保護も入ってますし、特定動物の捕獲から処分も入ってます。だから普通の所がやるところ以上は解体してます。ほとんど皆さん休み年中取らないでやってます。

服部:頭が上がりません…。

 

所長:土日は、お客さんが一番来るので。土日は休めないですね。その時こそいろんな事をやりたいので。

服部:市内の保育園とか幼稚園にこういう事をやりましょうっていうのは所長さんがいろいろお話をされて?

 

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所長:小さいうちから、こういう事をやると良いよねって話になって。もっと長い目で見ようということで、こういう事やりたいねってなった時に、ちょうど他で年長さんを相手にいろいろ遊び時間を作っていた所が閉鎖になる事になりまして。閉鎖になってプールに通わせる事にしたと、ところがプールって小さい子だと好きな子も嫌いな子もいるので、という話がちょうど入ってきた。そこで、これやってみませんか?って、何度も打ち合わせを行って実現することができました。せっかくだから基礎教育からやらせたいねっていうので、メニューを作りました。勿論アレルギーのある子もいるので、アレルギーの子は前もってどういう状態なのか、どこまでOKなのかということを連絡して貰うようにして、全て打ち合わせをした上で必ず来て貰う。アレルギーの子って遠くから離れているだけだとかわいそうじゃないですか。だからその子にも遊んでもらわないといけないという事で、例えばですけど一発芸をやった後のお礼を普通は手でやりたいのですが、アレルギーであんまり近寄って行けないからその子にはポンと投げてもらって、お礼をあげてもらうとかは行ってきました。そういうのは凄くポイントで、やっぱりアレルギーと怖いっていう事に対してどういう事をやろうかっていうのはかなり綿密に、特に一年目はやりましたね。

 

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服部:それで市内の全保育園・幼稚園を対象にしているっていうのはちょっと驚きです。

所長:私立はそれが入りません。私立も本当はやりたいのですが、私立も入ってくると結構な人数になってしまうのです。本当はやりたいのですが、これ以上やるとうちキャパオーバーになってしまうのです。

LE:職員のみなさんの未来に対する投資の姿勢というかそういった部分へ時間を割くというのは勇気のいることだと思いますが、それを実現というか選択していらっしゃることに感銘を受けました。

 

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岡崎市なかよし教室(PDFダウンロード)

 


第一回「県内で最も厳しい譲渡制限、55歳未満に込めた思い。」
第二回「猫の飼育レベルの底上げ。」
第三回「飼い猫か、のら猫か、境界線があいまいな猫たち。」
第四回「飼い主がいない捨て猫のら猫への対処法は。」
第五回「高齢の方からの引取り」
第六回「大事なのは、どうしてここへ持ち込んだのかをきちんとヒアリングすること」
第七回「早急な“ゼロ”ではなく、本来の “ゼロ”を目指す」
第八回「アレルギーのある子もどうかかわってもらえるのか。岡崎市内の年長児さんに来てもらうなかよし教室」
第九回「路上で死んでいる動物と殺処分される動物って同じ死かな、死に違いがあるかな、どっちがかわいそう?」
第十回「迷子の子だけではなく、事故に遭って亡くなってしまった子の飼い主も探す。返還率70%の裏側に職員の努力。」


 

写真:服部たかやす
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PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。