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愛知県岡崎市の東公園内にある「岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)」。東公園内に動物園も隣接しており、広々として明るい雰囲気の施設です。動物園や公園があるため、自然と足を運んでしまうような施設になっているのが印象的です。こちらの施設では、東公園動物園の管理運営加え、動物の保護・治療また、管理・譲渡等様々な事業を行っています。今回LEONIMALは岡崎市動物総合センター・Animo(あにも)にお話を伺ってまいりました。全10回に渡り、センターで保護・収容される動物たちや、ペットと飼い主さんが抱えている問題、長期的な目線で捉えた子どもたちへの早期教育など幅広い取り組みに対してインタビュー形式でお届けしてまいります。第七回は本当のゼロとはどういうことなのかに関してとても深いお話をお聞きすることができました。

 


 

 

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LE:センターで保護・収容される犬猫の数を減らす為に気を付けるべき事として、これまでに飼い主の高齢・病気・経済的理由に対して、引取り譲渡の対象年齢を55歳未満の制限を設けたり、早めに相談に来てもらう事といったこと以外に、もっと蛇口の根本の段階でどういった方法があるのでしょうか。

 

所長:本当にそういう理由の反対の事をして頂ければいいと思います。やっぱり基本的には最期まで飼うっていう。もしも、飼えなくなったら飼える人に渡すところまで責任を全うする。あとは繁殖制限をして、望まれない妊娠、自分が飼えない動物を増やさないという部分ではないかと思います。あと、これから飼おうと考える人は、動物を飼うのは大変というのを自覚して貰うということも大切だと思います。

 

LE:やはり、そうですよね。

 

所長:あと、一つ言えているのは、当センターでは「殺処分ゼロ」という言葉を基本的に使っていません。「殺処分ゼロ」もそうですし、それから「地域猫」と言葉も使いません。理由は、現場にいる我々が感じているのは「殺処分ゼロ」という言葉だけが先歩きをしているのではないかということです。本来目的としているのは何の為かということを深く考えるようにしています。しかし、ゼロになるっていう事に関しては、どこを減らしたいのかという部分をすごく考えています。「殺処分ゼロ」と一言でいうと、実は行政の殺処分をゼロにするのは簡単なのです。

 

LE:簡単というのはどういうことなのでしょうか。

 

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所長:極端な話をすると、飼い主さんから動物をから引き取らず、ペットが飼いたいという人に条件なく譲渡し、ボランティア団体やNPO法人にお願いして引き取ってもらうということをしたとすると、ゼロは現実的なのです。当センターの引取り数と殺処分数を見て「コレだけの数?」と大体よく言われます。「この数になっていればゼロはすぐですね」と。しかし、当センターは、数としてのゼロを目指しているわけではないのです。私達が目指すのは、人も動物も双方にとってWIN-WINの状態になる事を目指しています。もちろん減っていくことは望ましいことです。しかし、センターが引き受けなかった動物たちのしわ寄せがセンターではなく、市民のみなさんのところへ移動するだけになってしまうような状況はそれでは根本的な解決になりえないと考えます。それは税金をつかって市民のみなさんのためにやる仕事ではないと思うのです。例えば、人に危害を加えかねない動物の引取りを拒否して誰かが怪我をしてまったり、センターで引き受けられなくなった動物たちをボランティア団体さんにお願いして、ボランティア団体さんたちが多頭崩壊になってしまうケースもないわけではない。凶暴な動物その負担を市民の方やボランティアの方々におしつけてしまうことにもなりかねない。それが税金をいただいて行う市の仕事として、市民の皆さんにとって本当にいいことなのかといつも自問自答しています。日々現場で仕事をしている者として感じるのは、そういった数字だけのゼロや早急なゼロを目指すことは根本的な解決にはつながらないのではないかということです。一度飼い始めたペットを最後まで飼うということができるかが大事で。それを実現するにはどういったことが必要かを考える必要がある。そういったことを考えながら自分たちはいつも何ができるのか。根本を改善することを目的にひとつひとつ考えながら日々取り組んでいます。

 

LE:誰かにしわ寄せが行ってしまうゼロは動物も人も不幸にしてしまう可能性があるということですね。根本を改善するためにどういったことが必要なのでしょうか。

 

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所長:急激に減らす事は不可能だと思っています。これはもう無理なのではないかと。何故かというと、動物愛護法というのが議員立法で出来た法律で、ずっと放置されていたのですが、ここ十数年間、物凄い勢いで急にいろいろと変わっています。つまり、これは未完成の法律だと思うのです。今でも新しい考え方を入れていきながら、完成させようとしている法律だと思っています。根本になるのは一体どこなのか。現場で日々自問自答です。今までの動物対する価値観がある程度定まってしまっている人達に対してどれだけ努力して伝えてもなかなか聞いてもらえない。であれば、殺処分を減らす為には、小さい時から子供達の教育をしていくっていう事を一生懸命してあげるという方に力を入れていこうと考えているのです。今から20年経った時にきちんとした形に、というような事を目指したいと考えています。今やるのではなくて、ゆっくり時間を掛けて基礎からやらせるという事をやっていきたいなと。これは多分あまり他では言われないことだと思います。

 

LE:そういったいろいろな意見もあると思いますが、WIN-WINを目指すっていうところでいくと、ネグレクトのような状で長く生きる、ではなくて、その状況から早く救ってあげる事の方が重要という事でしょうか。

 

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所長:ある意味そうです。だから飼う気の無い人が、無理に終生飼育という事に押さえ付けられて、動物を虐待しながら飼育するというのは本来の姿ではないと思います。本当は虐待している人間が一番悪いです。それは当たり前です。だけど、そうなるかもしれないというのを察知しながらも、終生飼育を無理に押し付けるのは如何なものかなと思います。現実的にどうしても駄目という状況もあります。何でこんな事をするのって思われる方もいると思います。その中でやっぱり相互理解をちゃんと取れる位置に立ってないといけないと感じています。片方に乗らない。公共の施設として、そういったスタンスで物事を進めないといけないのではないかと感じています。

 

LE:センターは非常にどの立場の人からも中立でなければいけないということですね。

 

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所長:はい。どちらかというと今はサイレントマジョリティとノイジーマイノリティの典型みたいなのが動物の世界ってあると思うのです。マイノリティで声の大きい人達の事だけを聞くと、サイレントマジョリティの人達は我々を頼りにしてくれなくなってしまう。私たちの考える事は何なのかという部分が見えなくなってしまって。そういった状況を起こしてしまってはいけないと思います。だから、もう飼育することが嫌になってしまった人にとっては、やっぱり嫌なものは嫌なのです。ただどの段階を皆で考えて、ここまでだったらいいというラインを決めていかないと駄目だと思うのですね。それが、片方の声の大きい人達のだけを聞くのではなくて、本来どういうラインで線を引いていくのが人と動物にとって良いことなのかということを考えていくっていうのが必要な事なのかなっていうのはすごく感じますね。

 

LE:そこで、こちらのセンターで実施されているのが、子どもへの早期教育ということなのですね。

 

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第一回「県内で最も厳しい譲渡制限、55歳未満に込めた思い。」
第二回「猫の飼育レベルの底上げ。」
第三回「飼い猫か、のら猫か、境界線があいまいな猫たち。」
第四回「飼い主がいない捨て猫のら猫への対処法は。」
第五回「高齢の方からの引取り」
第六回「大事なのは、どうしてここへ持ち込んだのかをきちんとヒアリングすること」
第七回「早急な“ゼロ”ではなく、本来の “ゼロ”を目指す」
第八回「アレルギーのある子もどう関わってもらえるのか。岡崎市内の年長児さんに来てもらうなかよし教室」
第九回「路上で死んでいる動物と殺処分される動物って同じ死かな、死に違いがあるかな、どっちがかわいそう?」
第十回「迷子の子だけではなく、事故に遭って亡くなってしまった子の飼い主も探す。返還率70%の裏側に職員の努力。」


 

写真:服部たかやす
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PROFILE
1970年愛知県生まれ。写真家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。独学で写真を学び、雑誌専属カメラマンを経て、写真家として活動を開始。“人”を中心に、土地、文化、歴史、自然を重層的に捉えて撮影するスタイルで作品を製作。ドキュメンタリー的な視点を持ちつつ、フォトグラフィー、アート、デザインの間を往還する写真を撮り続けている。01年、動物愛護センターに集められ、譲渡を待つ子犬をテーマにした写真集『ただのいぬ。』(PIE BOOKS&角川文庫)を発表。05年、世田谷文化生活情報センター 生活工房で開催された写真展「ただのいぬ。展」は入場者5,000人を数え大きな反響を呼んだ。著書に『Do you have a home?』(ジュリアン)、共著に『写真以上、写真未満』(翔泳社)等。保護犬の存在を通じて犬と人との関係を考えるアートプロジェクト、「ただのいぬ。プロジェクト」の主宰。