前回に引き続き、熊本県動物愛護センター 所長・熊本県健康福祉部 健康危機管理課 乳肉衛生班 課長補佐のお二人へのインタビューをお届けします。※2016年12月取材当時の役職は「主幹(班長)」でしたが、現在の役職は「課長補佐」となります。
第5回は譲渡会など今現在の取り組み・継続していきたいことについてお伝えしました。最終回は災害時だけでなく、動物と人が共生する社会にするために大切な普段からの心がまえについてお伝えします。
LEONIMAL(以下:LE):動物を飼育するにあたって大切な心がまえは何だと思われますか?
熊本県健康福祉部 健康危機管理課 乳肉衛生班 課長補佐(以下:県職員):室内飼育とかクレートトレーニング、感染症対策という基本だけでなくて、やはり地域に受け入れられる飼い方というのが大事だと思います。子どもと同じで「あそこの犬良いよね」って思ってもらえるような、飼い主さんの普段からのモラルとか、地域との関わりが確立していくのが理想的ですね。
LE:以前、動物病院の先生もおっしゃっていました。「トレーニングをちゃんとしてマナーをよくさせるということが大事だと飼い主さんに言っているんだよ」と。飼い主さんが躾や飼育の仕方について、飼う前に相談できるところがあると良いですよね。そういう機会が少ないのかもしれないと感じます。
県職員:そういうことが動物愛護センターの本当の機能だと思いますね。室内飼育とか感染症対策とかトレーニングの根本には、そういう心がまえの啓発が必要ですね。行政だけではできないので、獣医師会さんやボランティアさんと目的を共有して一緒に取り組んでいけると理想的ですね。
LE:動物たちの一生に責任を持つ飼い方が啓蒙されていくといいですね。
県職員:熊本は災害に何度も見舞われてきましたが、たとえ災害が起ころうとも動物たちをちゃんと最期まで世話することのできる飼い方を非常時だけでなく、日常から意識するよう発信していきたいです。今はまだ災害後の対応でそこまでいけていないですが、今後はたくさんの方々と一緒に取り組んでいきたいと思っています。
LE:動物との同行避難について、我々も展示会などを通じて考えるきっかけを広めていければと取り組んでいますが、その点についてはいかがですか?
県職員:実は市区町村向けの手引書を作った上で、4月頭にお知らせしていく予定だったのが、ちょうど震災が起きてしまったんです。
LE:そのタイミングだったんですね。
県職員:本来、避難訓練も行う予定だったのですが。避難のマニュアルがいきわたる前にそうなってしまいました。同行避難という言葉を知らない方が多いのは事実ですね。一口に同行避難と言っても、すべての施設が動物を入れて飼育していいということではない。様々なケースがあるのですが同行避難を受け入れる自治体が何をすべきか、飼い主さんたちが何を準備しておくべきかをきちんとお伝えしていかなくてはいけないですね。そこには市区町村の連携も大切だと思います。施設によって室内飼育できるかどうかも決めておかなくてはいけませんし、避難訓練時に同行避難も一緒に想定して行えると良いですね。
LE:飼っている方だけの問題ではなく、飼っていない方にも影響がありますよね。飼い主さんたちのモラルやトレーニングなど、避難訓練時に考えられる機会があると普段の飼い方まですべてつながっていくでしょうね。
県職員:年数はかかると思いますが、我々も飼うための心がまえからお伝えできればと考えています。
LE:結局、同行避難は普段の飼い方につながっていく課題なんですね。
県職員:仮設住宅に入っても地域で一緒に暮らせるような飼い方をできれば、備えになりますね。
LE:私たちでもペット防災の基本BOOKを昨年作成しまして、ペットの社会化についてもお伝えしています。
県職員:人用の防災BOOKはよく見かけますが、ペットについてもこのような取り組みがあると考えるきっかけになって良いですね。
LE:本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
所長・県職員:ありがとうございました。
※この取材は2016年12月に行われました。
同行避難について知識を持ち、自分たちならどうするかを考えるのと同時に、地域に受け入れらるような飼い方を普段から意識しておくことも大事だと改めて認識しました。LEONIMALでは今後も大事なペットを守るために普段からできることを含めて、発信に取り組んでまいります。
6回に渡るインタビュー、各回の記事はこちら
その時熊本で インタビュー第1回:被災犬・被災猫の保護が始まった
その時熊本で インタビュー第2回:人とのつながりが動物を救った
その時熊本で インタビュー第3回:地震は動物の出産時期に起こった
その時熊本で インタビュー第4回:迷い犬・迷い猫にしないためにできること